シュートに関するスタッツを使ってセルビアの戦術を読み解く

こんにちは!タカハシユウスケです。

2018年6月8日〜12日にフランスのナントで「FIBA 3x3 World Cup2018」が行われました。

大会では過去3度のWC優勝している、FIBA世界ランキング1位のセルビアが、決勝でオランダを16-13で破り3大会連続4度目の優勝を果たしました。

セルビアは3x3の強豪国として知られていて、クラブチームの「Novi Sad」「Liman」は世界ランキング1位、2位です。

1つ前の2017年大会の決勝も同じカードでオランダと対戦しているセルビア。

2017年大会もセルビアが優勝していますが、ロースコアだった2018年大会とは逆の21-18とハイスコアのゲーム展開で、最後まで接戦が続きました。

今回は、セルビアに注目してスタッツからオフェンス面の戦術の変化を紹介します。

2017年から2018年大会で変化したスタッツは2つ。

  1. ドライブ数が減り、ペイントエリアの得点が増えた
  2. 2P試投数が増えた

この2つを2017年と2018年大会のスタッツから比較して見ていきます。

また、記事の後半では、スタッツの変化を基にセルビアの戦術の変化したポイントも分析しています。

シュートタイプ別の得点数などのスタッツから2つの決勝戦の数字の変化を見る

比較するにあたり、2017年、2018年のセルビアのシュートタイプ別の得点数とシュート試投数、成功数、成功率を使います。

このスタッツを使う理由は、セルビアがオフェンスで、どのシュートを試投/成功した回数が多いかで、どこのエリアで得点を狙っているのかが分かるからです。

簡単にいうと、試投数でペイントエリアが多ければインサイド。2Pやミドルが多ければアウトサイドを中心に攻めていることになります。

このスタッツでは、「ペイントエリア」と「ドライブ」で分けてカウントしました。

「ペイントエリア」でカウントしているシュートは、ポストアップからのシュートやピック&ロールなどの、ペイントエリアでボールを受けてシュートをしたものです。

要するにドライブ以外のペイントエリアのシュートは「ペイントエリア」にカウントしています。主にパスを受けてペイントエリアで得点/シュートしたものです。

ドライブも同じ1Pなので「ペイントエリア」にカウントしたいところですが、ドライブから成功した得点は、アウトサイドからスクリーンや1on1でペイントエリアにアタックした得点です。

パスからシュートにいったのか、ドリブルからシュートにいったのかでは、戦術上大きく異なると考えています。

なので前提として、

  • ペイントエリア→ドライブ以外のペイントエリアのシュート
  • ドライブ→1on1、スクリーンを利用したアタックによるシュート

としていることを頭にいれながら見ていただけると良いかと思います。

それでは次からスタッツを紹介していきます。

2017年は21得点ノックアウト勝利

残り38.2秒でセルビアのエースDusan Bulutが21点目となるドライブを決めてノックアウト勝利となった2017年大会。

この大会のシュート成功数、試投数、成功率は以下のとおりです。

目立つのはドライブの成功率。

9/10本(90%)で得点の半分ほどの9得点をドライブから上げています。

世界屈指のシューターDejan Majstorovicを筆頭に、2Pを得意とするセルビアですが、オランダの高さとタイトなボディコンタクトでなかなか2Pのシュートチャンスをつくることができませんでした。

何度かフリーになる場面やステップバックで落ち着いてシュートを放つ場面もありましたが、この試合ではそのシュートが当たらず。

ほとんどの試合でキャッチ&シュートで2Pを放っているDejan Majstorovicも、プレーを切り替えてドライブでリングにアタックしています。

オランダはファウルトラブルになっていたこともあり、ドライブ中心に切り替えたセルビアのオフェンスが上手くアジャストしました。

試合時間残り4分29秒のセルビアのオフェンスで、Dejan Majstorovicのドライブがバスケットカウントになり、オランダが7つ目のファウルを犯します。

3x3では、ファウルが7つを超えると、ファウルをする度に2本のフリースローが与えられます。

このプレーで2本のフリースローを決めたDejan Majstorovicは、3点プレーとなり、12-10と2点のリードだったところが一気に15-10と5点差まで広げることに成功しました。

この試合で7/7本(100%)のフリースローを決めているセルビアは、オランダからファウルを誘い効率よく得点を重ねていきました。

次に、「総得点の内、各シュートが占める得点の割合」「総FG試投数の内、各シュートが占める割合」を見ていきます。

この2つは円グラフにして、それぞれのシュートがどれくらいの割合なのかを表しています。

得点の中でドライブが42.9%を占めているのがわかります。

次に多いのがフリースローの33.3%。

タイトなディフェンスで2Pを抑えてものの、ファウルが多くなったオランダの弱みをついて得点ができたと言えます。

こちらは試投数なので、1試合を通してどのシュートを打った割合が多いかを表しています。

オランダの方が高さがあるので、ペイントエリアでシュートを打った回数が少なくなりました。

その分、スピードを使ったアウトサイドからドライブでオランダのビッグマンを抜き去ったり、ファウルを誘うことができました。

シュート試投数を見ても、試合状況に合わせてバランス良く攻めることができたと言えます。

2年連続、オランダと接戦となった2018年大会、今度はロースコアのゲーム展開に

2大会連続で同じカードでの決勝戦となりました。

2018年と2017年大会の代表メンバーは、セルビアが1人、オランダが2人の選手が入れ替わっています。

両チームのメンバーの入れ替わりによる戦術の変化もありますが、2018年大会では16-13のロースコアゲームで、リードを粘って守り切ったセルビアが勝利を収めました。

2018年大会のスタッツを見ていきましょう。

2Pを除くシュート成功率が80%超えという驚異のスタッツです。

ここで2017年から比較してみると、先に上げた2つの数字が変化してるのがわかります。

  1. ドライブ数が減り、ペイントエリアの得点が増えた
  2. 2P試投数が増えた

1つ目の「ドライブ数が減り、ペイントエリアの得点が増えた」では、2017年から変化した戦術が理由になります。

その戦術で変化した部分は、スクリーンプレーです。

よく使うスクリーンプレーにピック&ロールがありますが、「ドリブルスクリーン」と「スクリーンフェイク」も取り入れています。

ドリブルスクリーンは、ドリブラーがオフボールの味方に近づいていき、ハンドオフ(手渡し)でパスをします。

ハンドオフは、パスと同時にスクリーンの役割も果たしています。

ハンドオフした選手はそのままダイブしてリングにアタックしたり、ポップアウトしたりできます。

そしてもう1つ。スクリーンフェイクは、スクリーナーになるプレイヤーが味方のボールを保持しているかしていないか問わず、ディフェンスにスクリーンをかけに行くように近づいて、そのままディフェンスと味方の間をすり抜けていくプレーのことです。

ディフェンスと味方の間をすり抜けずに、ディフェンスの横まで行って、すぐにリングへダイブするパターンもあります。

この2つのプレーが2018年の決勝で使われています。

その変化がでているのが、ドライブとペイントエリアのシュート試投数/成功数です。

ポイントは、ドリブルスクリーンもスクリーンフェイクもオフボールのプレイヤーが「ダイブ」をすること。

ダイブとは、リングに向かって飛び込んでいくプレーのことで、海に飛び込むように勢いよくリングに走って行くことからダイブと呼ばれています。

ドリブルスクリーンとスクリーンフェイクのダイブは、ディフェンスにとって通常のスクリーンよりも動きが予想しづらいことが利点です。

スクリーンの動きに多様性があり、突発的にダイブをするとディフェンスがスイッチの対応が遅れて、有効に機能します。

スクリーン時のディフェンスの機能(スイッチやバンプなど)を麻痺させるディフェンスにとって厄介なプレーを駆使して、セルビアはペイントエリアの得点を増やすことに成功しました。

そして、2つ目の変化は「2P試投数が増えた」ことです。

ノーマークができる、ディフェンスのコンテストが無いといった場合には、ほぼ2Pを放っているセルビア。

ここにも先程あげた2つのスクリーンプレーが関わっています。

セルビアの選手は2Pシュートが得意なので、シュートを打つことだけでもディフェンスにとっては大きな脅威です。

ドリブルスクリーンでディフェンスが、ドライブやスクリーナーのダイブに対応して、少し下がってポジションをとることが増えます。

ディフェンスが下がれば2Pを狙うだけの間を得られるので、そういったチャンスではすかさず2Pを放っていました。

それでも2/18本(11.1%)という具合に入らなかったのは、想定外だったと思いますが。

シュートタイプ別の得点の割合もペイントエリアが31.3%まで増えて、全体のバランスが良い円グラフになりました。(2017年は4.8%)

2Pの試投数が18本あるので、グラフが偏っていますね。

2Pの方が成功率が低いと考えると、得点に繋がる絶対量を増やすために数を打つ必要はあります。

逆にこれだけ2Pを打っているから、ペイントエリア、ドライブの得点が成功したとも言えます。

まとめ

絶対王者セルビアの2017年、2018年「FIBA 3x3 World Cup」決勝戦から、戦術の変化を得点に関わるスタッツから紹介していきました。

シュートタイプ別の得点数とシュート試投数を見ていくと、戦術の変化を発見するきっかけにもなります。

メンバーが入れ替わったという変化もありましたが、得点に至るまでの戦術も変化したセルビア。

変化というより"進化"と言ったほうが良いかもしれません。

2大会連続で敗れていて後を追うオランダや、ロシア、ラトビアなどのヨーロッパの強豪も新しい戦術を取り入れて力を伸ばしています。

日本もFIBA 3x3 World Rankingでは3位(2019年1月6日時点)につけるポテンシャルがあります。

次のWorld Cupで絶対王者セルビアを破るチームがでてくるのか一層楽しみです。